緑ノ刹那
周りの兵士が動きを止め、見とれる程に、その姿は美しかった。

我知らずその兵士達を睨みつけていたリーフは、フィリアに声をかけられて慌てて笑顔をつくった。

『リーフ、バルド!!
何してるの?』


『フィリ』


笑顔で近寄って来る。


『見てわかるだろう。
剣の鍛錬だ。
フィリ、危ないから離れていた方がいいぞ』


バルドはそう注意したが、フィリアは笑って受け流した。


『大丈夫よ。
確かに剣はあまり得意じゃないけど』


(あれ?)

聞いていたリーフは、なんだかその言葉に違和感を覚えた。


―――その時。


『危ない!!』


いっそすがすがしい程、お決まりのパターンで、誰かに弾かれたのだろう、剣が宙を舞ってフィリアの方に飛んできた。


リーフもバルドも、いきなりの事に、とっさに動けなかった。

ただ、目だけは空中の剣に釘付けになり、剣がフィリアに突き刺さりそうになって、思わずリーフは目をつぶった。




―――キィン



刃が剣を弾く音が響いた。
隣でバルドが息を呑む気配がする。


恐る恐る目を開けると、そこには先程と何ら変わりも無く、平然としたフィリアが立っていた。

リーフが腰に差していた剣を持って。



辺りが一瞬静まり返り、その後、ワッと歓声があがった。
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