緑ノ刹那
素早く、ルードがフィリアに斬りかかる。
訓練用で刃をつぶしてあるとはいえ、やはり剣。
斬られればダメージをうける。

フィリアはそれをひらりと宙を舞ってかわした。
ルードの頭上を跳び、背後に着地する。


ルードも勢いよく振り向きざまに剣をふるったが、態勢を低くしてかわされた。

そのまま、フィリアはルードの懐にはいる。

目を剥くルードに微笑んで、余裕の表情で再度距離をとった。


ルードがじりじりと後退する。

それに合わせて、フィリアは前進した。


お互いの視線が絡み合う。


『何でさっき、攻撃しなかった?』


勝負の前とは打って変わった真剣な声で、ルードは尋ねた。
それにフィリアは、可笑しそうに答える。


『だって、私がすぐに勝ったらつまらないでしょ?』


刹那、フィリアの姿が消えた。


見守っていた他の団員も、リーフもバルドも、息を呑む。


次の瞬間には、地に倒れたルードの傍に、彼の喉元に剣を近づけたフィリアが立っていた。


『…参った』


歓声が響き渡った。
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