緑ノ刹那
『…これは』


響き渡る歓声の中、横にいたリーフだけが気づいた、小さな呟き。

問いかけるように上を向き、バルドを見る。

それに気づいたバルドは、慌てて「いや」と首を振った。


ルードとフィリアが近づいてくる。

バルドがまず、ルードに声をかけた。


『まさかお前が負けるとはな。
鍛錬が足りん』


『申し訳ありません』


その後、フィリアにも声をかける。


『フィリ、苦手なんじゃなかったのか?』


フィリアは頷いた。


『ええ。
あんまり好きじゃ無いの』


『『『……』』』


三人は賢明にも沈黙した。
フィリアは首を傾げると、ルードに向き直った。


『ルード、今日はありがとう。
お礼に、今度二人で街に行きましょう。
…なんて言ったかな、そう、"でーと"!!』


『え、いいの!?
よっしゃ、じゃ、いつでも誘ってよ』


『うん。
暇になったら誘うね』


笑顔で会話する二人。
横で見ていたリーフは恨めしそうな目線でルードを見た。
しかしルードは気づいているはずなのに、全く気づいていないというフリを貫き通したのだった。
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