緑ノ刹那
次の日の昼、リーフはフィリアに王宮の庭に呼び出された。
何でも、話したい事があるらしい。

しばらくの間花畑の前で立っていると。


『リーフ!!』


清々しい空気に響く、鈴を鳴らしたような声。

フィリアだ。

今日は昨日と対照的に、純白のワンピースを着ている。
ただ、胸元にディーンが贈ったネックレスが揺れているのと、そしてフィリアの横に、それを贈った張本人であるディーンがいる事に、リーフは少し「ちくしょう」と思った。
まぁフィリアには内緒なのだが。


『おはよう、リーフ』


そんなリーフの心情を知っているのかいないのか、ディーンは朗らかに挨拶してくる。
それに応えながら、チラリとフィリアを見た。


『今日はどうしたの、フィリ?』


『明日の戴冠式の事なんだけど…いい?』


『いいよ』


リーフの答えに、フィリアはホッとした様に息をついた。


『あ、あとディーンも聞きたい事があるみたいだったから、一緒に来たの。
――それで、私が聞きたい事なんだけど…』


ディーンが来た理由について説明すると、フィリアはポツリポツリと語り出した。


『私、変な感じがするの。
今日の朝、神官長に、戴冠式の段取りと、式が行われる場所を教えてもらったでしょ?
――式が行われる、あの銀の塔、あれを見てから、なんだか胸の中がざわざわするの。
――私、多分、あそこを知ってる。
だから、あの銀の塔について教えて欲しいの。
それに、神官長も私を見て、王様と同じぐらい驚いてた。
不思議なの。
今まで黙ってたけど、ここ――この城全部、私、知ってる気がする』


そこまで一気に言い終えると、フィリアはリーフを見た。

不安定に揺れ動く眼差しに、心が掻き乱される様な感覚を覚える。

――リーフはハッとして、ブンブン首を振った。

今は、そんな事はいいのだ。
とりあえず、フィリアの望みを叶えようと思い、リーフは静かに語り始めた。



その様子を、ディーンがじっと見つめていた―――
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