緑ノ刹那
『あの塔は、"黎明の銀"と呼ばれてるんだ。
昔、夜明けに鳴り響く塔の鐘の音を聴いて、その代の王が名づけたらしい』


リーフの言葉に、フィリアは首を傾げた。


『でも私、鐘の音なんて…』


『そう。
鳴らないんだ』


『……』


『いつからなのかは、わからない。
でも、あの鐘が鳴ったのを聴いたという者は、会ったことも無いし、聞いたことも無い。


――ただ、王家に伝わっている伝承があるんだ』


『…伝承?』


リーフは頷いた。
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