緑ノ刹那
フィリアの目覚めと同時に、茨の蕾がいっせいに花開き、深紅の花弁が宙を舞った。

茨の拘束は解かれ、自由になる。



しかし、フィリアは宙に浮いたまま



二人を見下ろした。



さながら、神の様に。






『お前か、私を眠りから覚ましたのは』


フィリアであってフィリアでない話し方。


『そう。
フィリア、君と契約した、ディーンだ』


リーフは違和感を覚えたが、ディーンは当然の様にフィリアに語りかけた。

その口調に、フィリアは眉をひそめる。



『誰が、我が名を呼んでいいと言った』


滲み出る威圧感。


『私はまだ、誰とも契約などしていない。
調子にのるな』


フン、と鼻で笑って、フィリアはふと、リーフを見た。
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