緑ノ刹那
『……ところで、契約していないっていうのはどういう事だ?
僕は、君を呼び出した。
これで契約成立の筈だよ』


気を取り直して、ディーンはフィリアを睨んだ。

その視線に全く気圧されること無く、フィリアはのたまった。



『リーフがいるからだよ。

思い出してみて。
お前が戴冠式について取り計らったんだから、答えはすぐに出るはず』



『……戴冠か!!』



『そう。
リーフが戴冠式を終えた時点で、リーフは私と仮契約をしていた事になる。
何と言ってもこの私が花冠を授けて、私自身リーフが気に入ったからね。
そこに、ファイが横から契約しに来たようなものだから、最終的に私は誰とも契約していない。

――まぁ、二人とは仮契約している状態ではあるけどね』


ディーンは悪態をついた。

これでは全く意味が無い。


そもそも、まだクレイの遺志がフィリアに残っているなんて――。


ハッと、ディーンは顔を上げた。
クレイの遺志。


それは、何だ?


『フィリア、クレイとの約束というのは何なんだ?』


『………。
クレイの血縁を見守ること。

そして、もし私自身が気に入る者が現れれば、契約を結ぶこと。

その時、他に契約を望む者が在れば、その者とクレイの血縁とで、勝負し、勝負が私の契約者となる』



『じゃあ僕とディーンで勝負するって事?』


リーフはいきなり自分の話が出てきて驚いた。
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