緑ノ刹那
『お前、知ってたわね?
私の事も、ディーンの正体も』


夕暮れのオレンジの光が差し込むなか、フィリアは王の執務室で前王を問い詰めた。

前王はそれにゆったりと頷き、深く頭を下げる。


『申し訳ございません。
しかし、何卒ご理解を…』


その言葉についカッとなった。

『理解ですって!?
ふざけないで!!
あんた達人間ごときが何をしようと知った事じゃない。
だけどね、それに私を巻き込むなっつってんのよ!!』


つい、言葉が荒くなる。

しかし、それはフィリアがどれほど怒っているか、その表れだった。



『脆弱な人間が私と……神と契約しようなどと。
フッ、笑わせる。
この私を駒にしようなど、舐めた真似をしてくれる。
そういう勝手な所が大嫌いよ』



一気に怒りをぶつけたフィリアに

前王はただ、一言だけ、



『しかし、リーフは気に入ったでしょう?』


と言った。


フィリアが黙り込む。


それが、答えだった。
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