緑ノ刹那
『………という訳なんだ』


同じ頃、リーフはバルドに塔の中で起きた出来事を説明していた。

全てを聞いたバルドは、目をいっぱいに見開いて、ぼんやり呟いた。


『じゃあ、フィリは女神で、ディーンは賢者の生まれ変わりで、お前とディーンでフィリとの契約権を奪い合うと。
それも明日』

『そうだよ』


どこからかフィリアの怒鳴り声が聞こえてきて、

(何やってんだよ父上は!?)

と心の中でヒヤヒヤしながらも頷く。



バルドは大きな溜め息をついた。

『……そうか…』


『バ、バルド…大丈夫…?』



なんだか可哀想になってくる。

白髪が増えそうだ。


『…大丈夫、だ。
ディーンに話があるんだろ?
俺はここで話を整理してるから、行ってきなさい』


『…うん、ありがとう』







廊下へ出て、ディーンを探していると。

フィリアにバッタリ出会った。



『………』

目が合った途端、ムッとして顔を背け、フィリアはさっさと立ち去った。



(えー)

何かしたのか、父は。


少し心配になって執務室に行くと。



壁がこなごなに粉砕されて、吹きさらしになっていた。

呆然として突っ立っていると。


『ハッハッハ。
少し怒らせてしまったな』


という笑い声と共に、父が現れた。


(少し!?)

リーフは頭痛がしてきた。

そして、早々に部屋を去ったのだった。




部屋の惨状に、掃除に来た使用人が倒れたのは、言うまでもない。
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