緑ノ刹那
『ディーン…』


言いかけて、急いで身を隠した。

やっと見つけたディーンは、廊下でフィリアと口論していた。

思わず、息を潜めて耳を澄ます。


『どうして、ファイが生まれ変わってるの?』


『……どうして、って言われてもね。
気がついたら魂がこの躯に定着していたから、僕にもよくわからない。
…君が好きで、君をクレイに取られたのが心残りだったから、かな?』


ディーンが苦笑する気配がする。


『何で……
昔は、ファイはそうじゃなかった。
そんな笑い方、してなかった。

――何の力を使ってるの?
今の貴方の躯には、魔力は無い。
なのに、魔法が使えてるのは――』


『それは、明日わかるよ』

フィリアの言葉を遮って、ディーンは笑った。


『―――っ』


フィリアは悲しそうな顔をして、立ち去った。
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