緑ノ刹那
『リーフ、出てきたらどうだい?
僕もフィリアも、とっくに気づいてたよ』


当たり前のように名前を呼ばれて、渋々出て行くと、ディーンが待ち構えていた。


『……で?
話したい事って?
塔の前で言ってたよね。
話があるって』


『……フィリの事だよ』



ディーンは眉を上げた。


『フィリアの?
ハッ、君と話す事なんて、何も無いよ』


鼻で笑うディーンを、リーフは睨みつけた。


『僕にはある。
――君は、フィリの何なんだ?
本当に、古の賢者の生まれ変わりなのか?』



リーフの問いに、ディーンは嘆息した。


『何で君にそんな事言わなきゃならないんだ。

だいたい、フィリアの何なんだ、なんて君が言える事?

君こそ何なんだ。
ポッと出てきて、さもフィリアの隣にいるのが当然な様な顔をしてるが、それは君が王族だから。

全く、これだからクレイの血族は嫌なんだ。
しかも、その顔!!
ムカつくんだよ!
クレイにそっくりだ!!』



ディーンに思わぬ反撃を受け、言葉に詰まったリーフだったが、後半は明らかに、ただのいちゃもんだった。


(ただ単に初代国王が嫌いなだけじゃないか)


『取りあえず、僕はフィリアの仲間で、家族みたいな関係だった。
で、れっきとした賢者の生まれ変わりだよ。

…まぁ、正確に言えば少し違うが、お前に言っても分からないだろう。

とにかく、僕は君よりよっぽどフィリアと親しいって事だ!!』


ディーンは言いたいだけ言うと、最後は勝ち誇った様に笑って去っていった。



あとには悔しがるリーフだけが取り残される。

そこへ、またもや前王がひょっこり現れた。


『いやー、青春だなリーフ。
いいものを見させてもらったぞ。
ハッハッハッハ。
ではな。
もうそろそろお前も広間に行った方がいいぞ』

そう言って、歩いていく。


リーフはその背中に殺意を覚えた。
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