緑ノ刹那
その後、皆各々の部屋へと切り上げるなか、リーフだけは一人、城の外へ出た。


ちょうど塔の辺りで立ち止まり、夜空を見上げる。

そこへ。


『何してるの?』


フィリアだった。

沈黙するリーフに苦笑して、静かに近寄る。

そして同じように空を見上げた。


『……驚いた?』


『え?』


突然の問いに、とっさに何の事なのかわからず、聞き返す。

それにもやっぱり苦笑して、フィリアはゆっくりと語り出した。


『――私が、人間じゃなかったこと。
何だか、気になって。
リーフやバルドを騙すような形になっちゃったし、尚更ね。
それに、契約とかいう変な事にまで巻き込んじゃって』


リーフは驚いて隣にいるフィリアを見た。

『気にする事ないよ。
誰も騙されたなんて感じてないし、契約の事も、むしろ面白そうだしね。

……僕からも、一つ聞いてもいい?』


フィリアもリーフを見た。
視線が、絡み合う。

『なぁに?』


『初代国王は…クレイはどんな人だった?』


その問いに、フィリアの表情がフッと緩んだ。


『そうね…
顔は、リーフに似てた。
リーフと同じ、陽の光の様な金の髪と、青い瞳。

でも、性格はあんまり似てない。
クレイは凄く頑固で、私がいくら反対しても、そうと決めたら絶対に譲らなかった。

――私との、最後の約束の時も。』


そう言って、寂しそうに微笑む。


『最後の約束って、子孫の中で気に入った奴がいたら契約しろっていう?』


『うん。』
< 75 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop