緑ノ刹那
一人取り残されて、フィリアは思い出に浸った。



バルドに、気を使わせてしまった。

確かに、私はクレイの事が好きだった。
けれどそれは、半分は母の様な気持ちから、もう半分が少女の様な気持ちからだった。



それに―――


フィリアは、ベルの事も好きだった。

だから、彼女とクレイが一緒になって良かったと思っている。

でも、心のどこかが、
酷く痛んだのも、事実。



結局、フィリアには、自分が二人をどう思っていたのか、よくわからないのだ。

だから、気持ちが揺れる。


『これだから、人間は嫌なのよ』
呟く。



彼らといると、己の気持ちさえ見失う。


温かさに包まれるから、
その後に来る冷たさに怯えてしまう。

どうせ、いつかは死に逝く物なのに、必死になって、取り縋る。


だから、キライ。





それでも、未だに


追い求めるのを、やめられないのは、何故なのだろう。



この答えが見つかる日は、くるのだろうか。
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