緑ノ刹那
リーフは尚も続けて言う。


『君は、人間が嫌いだった。
でも、その気持ちはクレイや、他の人間と出会って変わったんだ。
君は、今では人間が嫌いじゃないはずだ』


『……何で、そんな事言うの?

ふふっ、クレイと同じ、その言葉。
今まで、誰も私にそんな事言わなかったのに。


――私の負けよ、リーフ。

確かに、私はもう人間が嫌いじゃない。
それどころか、好きになれた者もいる。

……例えば、クレイ。
彼は、私を連れ出した。
皆が崇め、奉り、そして忌み嫌った私に、笑いかけて"フィリア"と呼んでくれた。
――"緑王"ではなく。

あの時は解らなかったけど、確かに私は、それが嬉しかった。

…泣きたいぐらい、嬉しかったの。

だから、私はもう、人間が嫌いではないのよ』



複雑な笑みを浮かべながら、独白するフィリアに、リーフは何とも云えない気持ちになった。

彼女が人間を好きになるという事は、彼女が傷つく事に繋がる。


(これで、いいはずなのに――)




悲しみが、拭い去れない。
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