緑ノ刹那
『……っ
何で?
止めて!!
私の前で、消えたりしないで!!』


フィリアが、叫ぶ。

そんな様子を、リーフ達は結界の中で、見ていた。





――魔族に取り憑かれた人間は、死ねば躯は灰となり、跡形も残らない。


何かの書で読んだことがある。

恐らく、もうファイは――







『何で、こんなこと、するの?
私が、助けるって……』


傷ついた体で、ファイにやっとの思いで近づいたフィリアは、涙を零しながら言った。







――本当は、わかる。
ファイは、自分を悲しませたくなかったのだ。

フィリアが自分を殺せば、それは一生フィリアを苦しめる。
それを知っていたから、ファイは自分で自分にとどめをさした。





もう、助からない。


人間が、どれほどの怪我で死ぬか、フィリアは知識として知っていた。
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