Rhein
Wunsch-3
あの日、彼女を部屋に入れたことは、後悔していない。
「煙草、全部やるよ」
もう、俺には吸えない煙草を渡した。
吸ってはいけないと言われて買い漁った。
でも、吸うことは出来なかった。
――――――少しでも長く
俺がそんなことを願ったなんて驚きだが、もう終わりだ。
「教師がそんなんでいいの?」
俺はもう教師じゃない。
正確には、
なくなる、だけれど。
「俺はもう吸わないから」
彼女は少しふてくされたような顔をして、鞄に突っ込んだ。
「ありがと」
わかっていたんだ。
「じゃあもう遅いから送るよ」
素直に送られたりしないってことは。
「早くドア開けて出て」
わかっていた。
期待した。
彼女のこの言葉を、抱けないのに、望んだんだ。
「私まだ帰らないよ」