ユメクイ蟻
もう夕日が落ちて
街灯が点き始めていた。
アパートの前に
スーツの男性が見えた。
ケイさんだった。
スーツケースと
あたしの夕日の絵を持って
猫がびっくりしたような顔をしていた。
あたしは走って
「ケイさん!!待ってよ!」
ケイさんの腕をぎゅっと握った。
「黙って行くつもりだったの!?」
『モモさん・・・・・』
「ひどいよ!ちゃんとお別れ言いたい!」
『僕はこの絵を頂いていいのですね?』
「ねぇどうして」
もう涙はこらえられなかった。
『モモさん。ありがとう』
またあたしの頭を
その大きな手で優しくなでた。