S・63
チューチューアイスと蟻と私


チューチューアイスと蟻と私

夏のある日。
アイスクリームと言えば、だいたいの方はカップに入ったバニラアイスなどを思い浮かぶだろう。
しかし我が家で、カップに入ったアイスクリームを食べた記憶がない。
覚えているのは、10本入って100円程で夏場によく売られているチューチューアイスや、味と大きさのわりに手頃なホームランバーくらいだ。
私はチューチューアイスが大好きでよく食べた。
1人で1本食べる時もあれば、
「はんぶんこしなさい。」
と言われ、兄と分けあったりした。
チューチューをはんぶんこする時は、だいたい喧嘩になるものだった。
より多くのチューチューを食べたいがゆえに、ちょっと出っ張っている部分の方を選びたがるのだ。
それに出っ張りの部分を持って食べれば手も冷えずに済む。
こんな下らない理由で何度喧嘩し母の逆鱗に触れたことか。
話しはさておき
食べた後が問題なのである。
その冷たさと美味しさに満足し、そのままゴミ箱に捨てた。
至って普通の行為だ。
しかし翌朝起きたら玄関の戸の隙間からゴミ箱まで蟻の大行列がぞろぞろと続いていたのだ。
容器に僅かに残っていた甘い汁を求め、ここまで必死にやってくるなんて…
始めはぎぃや~っと騒いでしまったが、気持ち悪いという感情よりも幼いながらに関心してしまった。
ちなみに私は虫は好きだが、これにはよほどビックリしたのかそれ以降アパートでチューチューを食べた記憶がない。

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