S・63
母が勝手に名付けてそう呼ぶものだから、我が家では“ザリ子”という呼び名が定着していた。
私はなんとなくザリガニが好きだった。しかしその理由がとても子供らしくあり馬鹿らしい。
保育園で同じクラスだった男の子にとても泣き虫な子がいた。
彼は泣く時にいつも顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
その際彼の鼻が、皺がよってザリガニの胴体のようになるのだった。
彼が泣く姿を見る度に、心の中で「面白い鼻だなぁ。ザリガニみたい」。
と嘲笑していたのだ。
ザリ子の話しに戻るが、ザリ子を飼って初めてザリガニの臭さを思い知った。
それで嫌になったのか、次第に私はザリ子に興味を示さなくなり、ザリ子を飼っている事すら忘れかけていたある日、母の叫び声にびっくりした。