いじっぱりなくま

くまの木は、沢山の実をつけて静かに立っていました。

「くま……。」

りすくんは、お母さんの腕のなかから離れて、近寄りました。

この、優しい雰囲気は、くまそのもの。

りすくんは、木に抱きついて泣きだしました。

くま

くま

きみはわるくないのに

どうして

ちがうって言わなかったんだ

後ろのほうで、りすくんのお母さんも泣いていました。

周りにいた子どもたちは、不思議そうに2人を見ていました。

そのうちの1人がりすくんに話しかけました。

「りすくん、りすくん。どうしたの?」

りすくんは泣きながら言いました。

「くまが木になってしまったんだ。くまはなにも悪くないのに。」

その子は言います。

「くまはりすくんを突き落とした。十分わるいよ。」

りすくんは叫び声で答えます。

「くまはガケから落ちたぼくを助けただけだ!くまはわるくない!命の恩人なのに…わるいわけないんだ!!」

「それ、ほんと?」

その子は目を見開いて言います。

りすくんはこくりと頷きました。

頷いたのをきちんと見たあとで、その子は仲間のところに戻ってしまいました。

けれど、それからしばらくして、その子は仲間と一緒にりすくんのところに戻ってきました。

その子は言いました。

「町のみんなに言おう、くまはわるくない、って。それから、魔女のところに行って、くまを戻してもらおう。そして、謝ろう。」

りすくんは流れる涙をぬぐいながら、うん、と言って頷きました。
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