謝罪人 Kyouko
次の日の朝。

恭子は宿泊先のマンションを出た。
学生の通学時間を避けてJR駅に向かった。

駅のロータリーまで来ると、恭子の前をシルバーカラーのキューブが通り過ぎて止まった。

「おねえさん」
恭子が振り返ると、助手席のウインドウを開けて久美が顔を出している。

久美は車を降りて、恭子に近づいてきた。

「どこか行かれるんですか? 」
久美が聞いた。

「仕事が終わったから帰るのよ」
恭子が答えた時、運転席のドアが開く。

車から松山が出てきた。

「お兄ちゃん、やっぱりそうだったね」

久美は、車内から恭子の後ろ姿を見つけた。
恭子なのか確かめるため、ロータリーまでやって来た。

松山は、無愛想に恭子を見た。
恭子は、松山から目をそらした。

「ちょっと、渡したいものがあるんです。待ってて下さい。ねぇ、お兄ちゃん、おねえさんと一緒に駅で待ってて」
と、言って、久美は勤め先の店まで走って行った。






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