謝罪人 Kyouko
「昨日、倒れた私に付き添ってくれたのは、松山さんなんでしょう」

「そのことか・・・ライターをもらったお礼だよ」
松山は、照れるように冗談ぽく言った。

「あんたが謝罪人なんてな・・・」
松山は、信じられない様子で言葉を呑んで言った。

「どうして、市職員の不正のことを言わなかったの? 」
恭子は、会見で何も言わなかったことが気になっていた。

「あんたを会場の中で見た時、正直に驚いたよ。でも、それと同時に久美のことを思いだしたんだ。久美から言われたんだ。あんたのことを責めたりしないでくれって・・・」

「本当に・・・?」

恭子は、松山の言っていることが信じられなかった。
妹思いなのはわかるが、それだけで記者の仕事を放棄するとは思えない。

「久美があんたに会ってなければ、あの時、俺も余計なことを考えなかったのにな・・・」

松山が、タバコを吸いながら意味あるげに言った。




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