謝罪人 Kyouko

現実 ①

十二月。
町はクリスマスシーズン一色だった。

恭子は、島田の謝罪会見の後、しばらく仕事をしなかった。
今回の仕事は肉体的にも精神的にも疲れた。
そのため体を休めたかった。

恭子が買い物に出向くと、クリスマスツリーの華やかな電飾が、どこの店に行っても見られる。
町を歩けば、定番のクリスマスソングが聞こえてくる。

恭子は、以前から欲しかった黒のシャネルトートバッグを買った。
決して安い買い物ではなかったが、仕事を成功した証のためバッグを買った。

仕事の報酬で何かを買う。
そして、報酬に似合ったものを買う。
そのことが仕事への活力になる。
謝罪の仕事を始めてから、そう考えた。

恭子は、買い物を終えて行きつけのカフェに入った。
窓側に設置されたカウンターの椅子に腰掛けると、携帯電話のメールが入った。

相手は木村からだった。

『急用のため、オフィスに来てほしい』
と、書いてある。















< 122 / 138 >

この作品をシェア

pagetop