謝罪人 Kyouko
タクシーは交差点を通り過ぎた。
タクシーは少しずつ加速してゆく。

「なかなか、おもしろ推理小説のシナリオですね」
中居が皮肉ぽく笑って言った。

「あなたの言い分だと、私が新市長とつながっていて、島田前市長の辞任を工作したと思っているようですが、それは違います」

中居は、首を横に振って否定した。

「確かに島田前市長の愛人問題が発覚した時、私は何もしなかった。でも、それは正しい判断だと思っています」

「正しい判断・・・? 」
「それは、恭子さん、あなたの謝罪が影響していたからです」

「どういうことなの?」
恭子が首を傾げた。

「あなたが島田前市長のために謝罪したことにより、島田前市長の市民の支持は復活した。そして、市民は町の繁栄することへの期待で大きく高まった。だが、そんな時の愛人問題発覚は、市民への裏切り行為しかならない。その時の島田前市長には、信用回復の見込みがなかった」

「それで、島田さんを見捨たの? 」
「見捨たなんて、そんな言い方は良くないですね」
中居は薄笑いをして否定した。







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