謝罪人 Kyouko
「いずれにしても、島田前市長には、いろいろな不正な疑惑があったことは事実です。これからも、いろいろな疑惑が浮上するたびに、それをもみ消すようなことばかりするのが、秘書である私の仕事でありませんからね」

「・・・・・・」

「あなたにも言ったことがありますが、私は、町の繁栄を望んでいるんです。今度の市長は、島田前市長以上に政界にも財界にも顔が利く人です。今度は、その人のために働くだけです」

中居は淡々と論するように言った。
その表情は、どこか冷酷さがあるようにも見える。

タクシーが駅前のロータリーに止まった。

「降りるんですか?」
中居は、内ポケットから財布を取り出しながら、恭子に尋ねた。

中居は料金を支払って、タクシーから降りた。
それに続くように恭子もタクシーを降りた。

静かな小さな駅だが、今日は帰省客が乗り降りして、いつも以上に人が多かった。

「まだ、何か用事があるんですか? 」
タクシーが走り去った後、中居が恭子に聞いた。

「市職員採用の不正は、どうなるの? 」
恭子は、一番聞きたかったことを切り出した。




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