謝罪人 Kyouko
「松山のことですか? 」
「そうよ。松山さんの妹さんのことは知っているでしょう? 」

「・・・そのことですか」
中居は、一瞬黙った。
何か考えているように。

「正直なところ、同じ市役所で働いている者の中で、誰が不正で採用されたのか私にはわかりません。わからないというか、わかるはずがないんです。それは、どうしてかわかりますか?」

中居は真顔で恭子に聞いた。

「あくまでも噂ですが、不正を持ちかけた人間も、不正を受け入れた人間も、絶体に人には話すことがないからです。職員の中には、自分が不正をして採用されていることも気付いていない人間もいます」

中居と恭子の間に粉雪が降り落ちた。

「職員採用を市の権力者に頼むのは、大抵は採用される者の親です。親は子供のために権力者に頭を下げて頼むんです。でも、その親たちが支払う金が、町の繁栄の元になることもあるんです」

「繁栄の元・・・そんな!」

中居は、すべて不正の事実を知っているようだ。
だが、そのことを何食わぬ顔で言っている姿を見ると、恭子は怒りがこみあげてくる。







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