謝罪人 Kyouko
「そんな怖い顔をしないで下さい。あくまでも噂の話です。それが真実なのか、わかりません」
「・・・・・・」
「そんな噂のために、松山は真剣になっているなんて」
「噂なんて!」
恭子は納得しない様子で、中居に突っかかるように言った。
「でも、あなたも謝罪の仕事をしていれば、わかるはずです。自分が正しいと思っても、依頼人のために自分の意志と反して仕事をすることがあるはずです・・・私がやろうとしている仕事も同じです」
中居がきっぱり言った。
恭子は、何か言い返したい気持ちだったが、中居の言っていることに自分にも思いあたることがある。
「それでは、そろそろ時間なんで、ここで失礼します」
中居は、恭子に会釈して改札口へ向かった。
中居の後ろ姿が人波の中に消えていった。
中居は、島田前市長を辞任させるため、自分を利用したことには違いない。
恭子は素直にずるいと思った。
だが、そのずるさが現実の世界であることを知った。
結局、恭子は中居の思うままに仕事をした。
市民に心から悪いという気持ちを持たない、ずるい人間の代わりに謝罪をした。
恭子は心がとがめた。
粉雪は大粒の雪に変わり、恭子の前を冷たく降り落ちてゆく。
「・・・・・・」
「そんな噂のために、松山は真剣になっているなんて」
「噂なんて!」
恭子は納得しない様子で、中居に突っかかるように言った。
「でも、あなたも謝罪の仕事をしていれば、わかるはずです。自分が正しいと思っても、依頼人のために自分の意志と反して仕事をすることがあるはずです・・・私がやろうとしている仕事も同じです」
中居がきっぱり言った。
恭子は、何か言い返したい気持ちだったが、中居の言っていることに自分にも思いあたることがある。
「それでは、そろそろ時間なんで、ここで失礼します」
中居は、恭子に会釈して改札口へ向かった。
中居の後ろ姿が人波の中に消えていった。
中居は、島田前市長を辞任させるため、自分を利用したことには違いない。
恭子は素直にずるいと思った。
だが、そのずるさが現実の世界であることを知った。
結局、恭子は中居の思うままに仕事をした。
市民に心から悪いという気持ちを持たない、ずるい人間の代わりに謝罪をした。
恭子は心がとがめた。
粉雪は大粒の雪に変わり、恭子の前を冷たく降り落ちてゆく。