謝罪人 Kyouko
恭子が、オフィスに戻ってきた。

木村はデスクに座ってカップ麺のそばを食べていた。

「どこへ行ってたんですか? 」
と、木村は恭子がドアから入ってくるなり聞いて、そばをすすった。

「中居さんを駅まで、お見送りしてきました」

「・・・そうですか」
うかない表情をしている恭子を見て、一瞬、木村は中居と何かあったことを感じとった。しかし、あえてそのことを聞くのはやめた。

「年越しそばを食べませんか? インスタントですけど」
木村が、デスクの上に置いてあるレジ袋から、木村が食べてある同じカップ麺を取り出した。

「これは、ロールケーキをいただいたお礼ですけど・・・」
木村は、落ち込んでいる恭子を気遣った。
カップ麺の封を開けて、コンパクトサイズのワゴンに置いてある電気ポットの前に立った。

「あの・・・」
恭子は言いずらそうに言った。

「私、謝罪の仕事を辞めようと思うんです」
恭子は、思い切って言った。

木村は、電気ポットからカップ麺のお湯を入れようとした動作が止まった。






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