謝罪人 Kyouko
「やはり、そうですか・・・」
木村は、恭子が仕事を辞めることがわかっていたようだった。

「辞めたい理由は、何ですか? 」
木村はカップ麺をテーブルの上に置いた。

「私のしている仕事は、正しいことをやっているとは思えなくなったんです」
恭子は木村の目を見て真顔で言った。

木村がデスクの椅子に座った。

「・・・・・・」
木村は、しばらく黙った。

「中居さんに何か言われて、仕事に失望したんですか?」
木村は恭子の心を探るように聞いた。

「私、心から謝罪する気もない人のために仕事はしたくないんです」
恭子が素直に答えた。

「こう考えたらどうですか。 あなたが謝罪の仕事したおかげで、町は繁栄を続けることが出来た。これは立派なことだと・・・」
木村は、思いついたように恭子を説得しようとした。

「すいません」
恭子は木村に深々く頭を下げた。
恭子の意志は強かった。

恭子はオフィスを出ようとする。

「恭子さん。僕は待っています。また、あなたが謝罪の仕事をすることを信じています」
木村が恭子の後ろ姿に向かって言った。

恭子は、振り返り木村に礼をしてオフィスを出て行った。









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