謝罪人 Kyouko
「地元の人間だったら、この時間に、この周辺を女性ひとりでは出歩かないよ」

松山は呆れた様子で言った。

「・・・・・・」

恭子が黙りこんだ。
松山は、何かを確かめるため記者特有の誘導尋問にも思えた。
そのため、何か言い返したい気持ちを抑えた。

「親切に教えてやるよ。ほんの一週間前に、この周辺で女性のレイプ事件が続けてあったんだ。ちょうど、今頃の時間にね・・・地元の女性だったら、警戒して、こんな時間には出歩かないさ」

松山は論するように言った。

恭子が、ふと思い出す。

松山が言うように、恭子の部屋の窓からパトカーや警察官のパトロール姿を見たのは、そのための巡回だったことだと理解した。


「悪いことは言わない。早く部屋に帰るんだね」
と、言って松山は恭子の前から立ち去ろうとした。







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