謝罪人 Kyouko
「じゃな」

松山は、急な用事が出来たらしく、恭子を問い詰めることをやめて立ち去ろうとした。

突然、松山は振り返った。

「罪の意識もない奴らとは、あまり深入りしないことだな。特に中居には、気をつけたほうがいい。あいつは、野心家だからな」

松山は、思い出したように恭子に忠告した。
そして、全速で走って行った。

松山がいなくなって、恭子はベンチに座り込んだ。

松山の話を聞いて、心が痛む思いがした。
自分が、島田市長と一緒に謝罪することが、本当に正しいことをしているのか?

再び、島田が市長に就任しても、不正が増えて、松山の言うとおり、真面目な人間が泣きをみるだけではないか。

恭子の中で迷いが生まれた。





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