もしも僕に。


「あの子が…いる…」

いつも見ていた男の子だ。

その子が今、私の、目の前にいるのだ。

思わず唾を飲んだ。

「こんにちわ」

え?私!?

周りを見渡しキョロキョロする。

…わ、私?

男の子はクスクス笑った。

「そうだよ。いつも窓から外見てる人だよね」

え、知ってたの!?

「俺、ナオって言うの。女みたいな名前でしょ♪漢字も“南”に“桜”って書くんだよ。名前だけ見たら完璧女だっつーのみたいなね」

私は唖然としていた。

しゃ、喋った。
あの子が喋った…。
今、私の前で喋った…。

「あれ?聞いてる?」

「うわ!あ!は、はい…!聞いてますちゃんと!」

急に顔を覗き込んできた彼にビックリして声が裏返ってしまった。


…なんか、想像と違う。
もっとクールな人だと思っていた。


「それにしてもいっぱい買ったね」

え、あぁ、これ?

「う、うん。春服買いに来たの」

「まじ?俺も!」

奇遇だね、と言わんばかりの即答だった。




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