もしも僕に。
バレンタインデー
榎月は次の日には何事もなかったように接してきたので私もいつも通りに接した。
日にちはどんどん過ぎていった。
なのに、まだ、春は来ない。
「おいバカ」
ほらね、いつもの榎月でしょ?
「なによハゲ」
「ハゲてねーし」
「ウソつかなくてもいいよ」
「………」
「いっ、た…」
普通に殴られた。痛い。
「なにすんのよ。てかなに?」
「チョコちょーだい」
はいいい!?
「ごめん、もう1回…」
“ゴン!”
痛い…。また殴る…。
「だから!チョコ!」
「いきなり何?」
「バレンタインもうすぐじゃん。俺の誕生日も近いしー」
誕生日…。2月18日だっけ。
「ん〜」
「俺チョコ好きだから食べたい」
「榎月ならいっぱい貰えるって」
これは正論だ。
榎月は顔が良い。
男友達に限らず女友達だっているだろう。
「…………」
あれ?黙ってしまった。
「ちぇー」
わざとらしい舌打ちをして自分の席に戻って行った榎月。
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