もしも僕に。


早く帰んなきゃ。

「あれ?みゆちゃん?」

……南桜だ。


「また会ったね!」

今日は良く会う。

「…なんでスーツ?」

南桜は少し派手なスーツをちゃっかり着こなしている。

「あ、やべ…俺スーツだ」

なんて、変なことを言ってヘラッと笑う。

「…ねぇ───」

「そういうみゆちゃんはなんで制服?」

「…あ」

そういえば、まだ制服のまんま。

「こんな時間に制服でいるなんて援交だと間違われるよ」

「な!?」

否定しようとした。
でも南桜の目が、怖い…。
冷めきった目をしていた。

「早く帰りなよ」

「…南桜はどこ行くのよ」

怖かったけど、勇気、出した。

「俺のことはどうでもいいから」

なにそれ…。

「まず早く帰って」

なにそれ…。

「…みゆちゃん?」

「なによ!そんなの私の勝手でしょ!関係ないじゃん!!」


泣きそうだった。
なんで、なんで、って。


「……帰れって」

な!まだ言うの!?

「心配なんだよ…」

南桜はそれを言うとへにゃっとしゃがみ込んだ。

「へ?」

「だからぁ!こんな時間に1人でいてさ、変なやつらに絡まれたどうすんの!しかも制服なんだし、不良以外にもオッサンだって近寄るかもだろ!」

南桜の顔は真っ赤だった。


「分かった?」

「う、うん…」

「じゃあ早く帰るんだよ?」

「はい…」

「ん♪いい子♪」

南桜は私の頭を撫でて「じゃあ」と行ってしまった。



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