【完】ひとつ屋根の下で。
「ヒカル、言えることから、ゆっくりでいいよ。焦るな。アタシはずっとここにいる」



俺の心を読んだのか、苺が、また真っ直ぐ俺を見た。



それだけで、何故か、恐怖心は消えていた。苺が信じられた。



「まずは、俺の出生から」



「うん」



女のクセに、全然高くない声が心地よく響く。俺は、この高くない、可愛くない声が気に入ってる。



「俺の生みの母親は、どこぞの国の外国人だ。父の愛人で、俺を生んで力尽きて死んだそうだ」



だから、本当の母親とは、会ったことがない。記憶も、昔見た写真だけ。



「父は、俺を認知し、藤河の籍に入れ、藤河の祖父母の家に預けたんだ」



苺を見ると、声も発しないで、ただ真っ直ぐに俺を見ていた。



ここから先は、言葉を選びながら、慎重に。
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