【完】ひとつ屋根の下で。
「俺はしばらく入院し、再びあの家に戻った。入院している間も夜は眠れることが出来なくて、退院するのが嫌だった」



帰って来て、表面上は優しい菜々子。



その仮面のように張り付いた笑顔が、気持ち悪かったのを、鮮明に思い出し、吐き気がする。



それをぐっと堪え、続ける。



「俺が戻ってきた夜、例外なく菜々子は部屋にやって来た」



俺を触る手、淫らな視線。



「恐怖の中で、部屋のドアが開く音が、聞こえたんだ」



微かに入り込む光。光に照らされたシルエット。



「それは、父だった」



菜々子は、俺の右肩に跡を残すのに夢中になっていて気づかなかった。
< 111 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop