【完】ひとつ屋根の下で。
思い出す、近づくシルエット。



「俺にしがみつく菜々子の体重が突然なくなり、地面にたたき落とされたアイツの体。その体に跨がり、首を絞める父」



父の顔はあの時の鋭いオーラを放っていた。



父は、首を絞めながら『ヒカル。今から俺がすることはお前には無関係だ』と叫んだ。



醜くじたばたしていた菜々子はもうぐったりしている。



人が、人の手で死ぬ瞬間。



父は菜々子の体から離れ、ポケットに入れていた薬を飲んだ。



「後になって理解した。それが、毒物だということに」



『いいかヒカル、良く聞け』



息が荒くなり始めた父が、それでも、紡いだ言葉。



放心状態の俺は、父の話を聞いてはいたが、それはほとんど覚えてない。
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