【完】ひとつ屋根の下で。
意識を失った苺を、自室のベッドに寝かせ、布団をかけてやる。
「ゴメン……苺、アンタの優しさに縋って」
俺は、苺のすべすべの肌を指で優しく撫でた。
触れる度に、優しさが溢れる不思議な感覚に陥る。
まだ、ずきずき痛む右肩を、部屋の窓越しに見た。
今まで見るだけで、思い出すだけで、怖くて、気分が悪くなって、悲しくなってたのに。
『アタシがアンタを愛した証』
その言葉が、不思議な魔法。
この傷痕は俺が、愛する人に愛された証。
ベッドで眠る苺の隣に、起こさないようにゆっくり入る。
苺の細い体を抱きしめ、俺は瞼を優しく閉じた。
親父、アンタが最後に遺した言葉の意味、分かったよ。
愛する人。その温もりを感じて、俺は何年振りかに夜に眠りに就いた……。