【完】ひとつ屋根の下で。
しばらくして、離れる顔。なんだか、名残惜しい。



「ね、苺。アンタの母さんはどんな人だった?」



ふいにヒカルが尋ねる。



「アタシ?アタシの両親は、すっげー小さい時に事故で死んだよ。だからアタシは親の愛を知らない」



「フーン……そ」



ヒカルの、同情の言葉のない短い返事。



こういうとこ、やっぱりアタシに合ってる。



「アタシは愛を知らないよ。だけど、アタシの命は愛がもたらした奇跡。アンタの親父さんが遺した言葉を聞いたとき、そう思ったんだ」



アタシが素直に思ったことを言うと、ヒカルは、眼鏡を外して右手で口を抑えた。



「ヤッベ……アンタごときの言葉で、今泣きそう」



ホント素直じゃないね、ひねくれ者のヒカルちゃん。
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