【完】ひとつ屋根の下で。
「親父……こんなに、こんなに小さくなって……っ!」


痛いくらいに握られた手。でも、アタシはそれを、離そうとは思わない。



墓を、ただ無表情で見つめて言葉を詰まらせたヒカル。



そんな姿を見て、アタシの瞳から涙が零れた。



「……れ?」



「なんでアンタが泣いてんのさ」



それに気付いたヒカルが、困ったように苦笑いをし、そっとアタシの肩を、抱き寄せた。



「自分でもわかんねー。……だけど、アンタを見てると、涙が溢れた」



アタシは、自分でも全然分からないこの涙を、止めることが出来なかった。



きっとその術を、アタシは知らない。



行き場もなく、ただ、涙は流れ落ちる。
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