【完】ひとつ屋根の下で。
ヒカルは、一旦抱き寄せた体を離し、再び墓前に向き直った。



繋いだ手だけは、離さないまま、強く温かく。



「ねえ親父、アンタが遺した言葉の意味、6年かけてやっと見つけたよ。……コイツが、苺が、アンタの言う、俺の『生きて生きて生き続ける意味』だ。……こんなに小さくなるまで菜々子から俺を守ったアンタの姿、俺、忘れないよ」



アタシは確かに見た。ヒカルの、墓前に向かって真っ直ぐ笑う横顔を。



姿を、横顔を、アタシは瞳に刻み込むように、ずっと。



涙のフィルターに包まれたアタシの目には、ヒカルの笑顔は色あせないくらいの輝きが、溢れてた。



こんな清々しい顔、多分、一生見れないから。
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