【完】ひとつ屋根の下で。
緩やかに、さわさわと吹く風。



草原みたいな日だまりの匂いが、ヒカルからする。



「帰ろっか」



ヒカルはゆっくりアタシから離れると、墓に背を向けた。



だけど、まるでその場に凍り付くように固まる。



「ヒカル?」



アタシも振り返ると、そこに静かに佇んでたのは…………。



「あ、アンタ」



ヒカルが静かに囁いた先には、小さな花束を持った、この間のおばさん。島本さん、だっけ。



「やっと、やっと来て下さったのですね……輝さん」



島本さんは、細い声でヒカルに向けてそう言った。



細い声は震えていて、どんな感情なのか読めなかったけど、決して、悪い感情じゃないように思う。



少なくとも、アタシは、だけど。
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