【完】ひとつ屋根の下で。
「12年後、貴方を引き取った時、穏やかだった姉は再び狂気に包まれた」



きっと、島本さんにとっても、忘れたい、けれど、忘れられない、消せない過去。痛む傷痕。



「姉は私に幾度となく、殺さず貴方を苦しめる方法を尋ねて来たものです。……そして一ヶ月経ったある日、私に言って来たのです」



それが、きっと彼女の罪の始まり。



「『性的虐待なら、きっと痛くないわよね』と……。私は愕然としました。姉はもう正気じゃない。憎しみに支配されたバケモノだと」



ヒカルの傷痕の裏側の、もうひとつの傷痕。他人のアタシでも、蓋をしちまいたい。聞くのが辛い。



「でも……でもそうじゃなかったのです。本当は、違ったのです」



島本さんは遂に涙を流し始めてしまった。
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