【完】ひとつ屋根の下で。
ヒカルはまるで、糸を切られた操り人形のように、ストン、と椅子に座った。



がたがたと震え、翡翠色の瞳には困惑を映し出している。



「貴方には苦痛だし、姉の気持ちは理解出来ないかもしれません。だけど心が壊れ、愛する人を一生手に入れられないとわかって、あろうことか憎しみの対象の半身を愛した姉は?姉は誰が救うの……?」



島本さんの話に、反応さえ出来ないアタシ。



義母さんも、悲しみと苦しみの果てに、ヒカルを、愛しているのに、歪みは治らぬまま、傷付けるしか出来なかった……。



ヒカルの苦しみは、痛みは、傷は、裏側で、義母さんが、自傷しながら与えた、愛と言う、悲しいナイフの痕だったなんて。
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