【完】ひとつ屋根の下で。







……は?



何?暑さにやられて、今幻聴が聞こえたような。



「はんっ……!気のせいに決まってるじゃん。ばっかじゃねーの、アタシ。なんなん!」




だって、そんなはず、ないし。さっき、何となく思い出に浸ったせいだろ。



「何が気のせいなの?馬鹿な苺」



再び、聞こえる筈のない低い抑揚のない声が響いた。



「つか、いつまで俺に背中向けてるつもり?……まあ、別に、いいけどね。関係ない」



長く骨張った指が、一瞬視界に見えたが、その更に後ろの腕に抱きしめられた。



「探した。2年もかかったけど、やっと。まさか最南端まで行ってるとはね」



抱きしめる腕も、無愛想な声も、変わらない。



そこに感じるぬくもりも、愛も、何ひとつ、変わっちゃいない。
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