【完】ひとつ屋根の下で。
定時の時間になり、言われたお店までタクシーで向かう。
着いたところは完全予約制の個室の和食屋。
こんなとこ、仕事でなければ2度と行けないだろうな。
入口に立っていると、いかにもって感じの高級車。
車を降りて来たのは若干メタボなハゲオヤジ。
……って、いかんいかん。得意先の社長に失礼だよな。
「君が神尾苺君かな?」
そう言って体の上から下までなめ回すように見てくるハゲオヤジ。
ゾクッと背筋が凍り、嫌な予感がした。
「さ、行こうか?」
「あ……ハイ」
この自分の嫌な予感を、アタシは信じれば良かったんだ。