【完】ひとつ屋根の下で。
そんな和やかな朝は過ぎ、いつもみたいに、隣でヒカルが課題をやっていると、トゥルルル、と電話が鳴る音が響く。
ヒカルは課題が忙しそうだから、アタシが代わりに出た。
「ハイ、もしもし」
アタシが出るとしばらく無言。
イタズラ電話?と思って受話器を切ろうとしたとき。
《藤河輝さんのお宅ですか?》
弱々しい、中年の女性の声が向こうから響いた。
そうか、この固定電話、ヒカルが置いてるもんだし、電話の相手にしちゃ、知らない女の声がしたらビックリして黙るよな。
「そう、ですが。ヒカルに何か御用でしょうか?」
アタシは再び受話器を耳に宛て、尋ねた。