【完】ひとつ屋根の下で。
アタシが恐る恐る、瞳を上に向けると、ヒカルの翡翠色の瞳が真っ直ぐ見つめてた。


こんな時でも、ヒカルの目は、何よりも美しい。



「俺、シャワー行ってくる。……少し、頭を冷やさなきゃ、な」



ヒカルの骨張った手が、アタシの長い髪の毛を梳く。



ヒカルは体を曲げて、菓子折りの箱を拾い、それをごみ箱へ捨てた。



アタシはヒカルに何をしてやればいいんだろう。



あの、何度も踏み付けるヒカルの姿を見て、ヒカルの傷の深さに愕然とした。



愕然として、怖がることしか出来なかった。情けなくて、悔しさが滲む。



ヒカルの、シャワーへ向かう後ろ姿を、何も言わずに見送ることしか、出来ない。
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