【完】ひとつ屋根の下で。
一人リビングに取り残されたアタシは、俯き、膝を抱えて座る。



こうすると、少しだけ冷静になる。冷静になった頭で、考えを巡らした。



今まで他人のことを考えたことなんてなくて、どうすべきか、そんなこと全然わかんない。



考えても、考えても考えても、答えなんて見つかりゃしない。



嗚呼、アタシはなんてちっぽけで、なんて無力なんだろう。



「……そういえば、ヒカル遅くないか?」



シャワーを浴びて来る、と言ってからもう30分は過ぎている。



空間の向こう側で、微かにシャアー、と流れるシャワーの音が聞こえてくる。



何か、とてつもなく嫌な予感が頭を過ぎった。



「…………ヒカル。」



本能的に、アタシは風呂場に走り出した。
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