幸せになるために
どんなに暴れても男の人の力にはかなわない
服を脱がそうとする龍造さんの手を逃れようと
必死に暴れてたら龍造さんの手が顎にあたった
その時フラッシュバックのように
兄に殴られてる自分をおもいだした
顔をあげると龍造さんの顔が兄に見えて
声もでなくなり体も動かなくなった

家をでてからの生活は幸せで兄のことも
家族のことも思い出すことはなかった
思い出そうともしなかったのに
昨日のことのように鮮明に兄になぐられてる様子が
思い出されて息が止まりそうに苦しくなった

その時下半身に今まで味わったことのない激痛が走って
現実に引き戻された
龍造さんが一つになろうとしていた

「いたいっ!!」涙を流しながら言うあたしを見て
一瞬龍造さんの動きが止まった
「春、もしかしてはじめてなんか?」
痛くて声が出ないあたしは首を縦に振った
龍造さんは驚いた顔をして「うれしい」っていった

泣いても暴れても龍造さんは動きを止めることなく
あたしの処女はこうして失った 

事が済んで龍造さんはあたしを抱きしめて
何度も謝った
「春がすきすぎて最近帰ってこんし他の男に
とられたっておもってた」
「春がすきになってくれるならなんでもする」
「清美とはわかれる」
ひとりで話し続けてる龍造さんに

「龍造さんが兄にみえた。あたしが一番怖くて
 一生心を通わせることのない兄に見えた
あたしが兄を憎むことはあっても好きにならんように
龍造さんのことも絶対に好きにはならん
きよをあたしからとるん?」っていった

龍造さんは目を見開いてじっとあたしをみていた
しばらく見つめたあとごめんっといって
ロフトにあがっていった
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